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何かの間違い 前編

斉藤朱音(あかね)は、大手食品メーカーに勤めている。社会人1年目。
大学時代のサークル仲間4人で、久しぶりに女子会を開いたとき、
一番仲の良いアサコから聞かれた。

「ねえねえ、役員秘書ってどうなのよ?」

そう、朱音は、役員室の秘書室で働いている。別に、自分で希望したわけではない。
大学で秘書業務の講義単位を取ったことはなく、もちろん秘書検定の資格も持っていない。
四月に配属されて、当の本人がびっくりしたのだった。

「わからないことばっかりで、大変よ」
「そりゃそうよね」

その言葉には、嫉妬というかやっかみが含まれていることがわかった。
アサコは、成績抜群、容姿端麗。アナウンサーになりたくて、マスコミ研究会に入っていた。
周りの誰もが「女子アナ」になるのだと思っていた。

しかし、世の中はそんなに甘くはなかった。
関東キー局のテレビ局はもちろん、地方局もすべて落ちた。
今は、親のコネで、小さな雑誌社に勤めている。

それに比べて、朱音は自分が何の取り柄もないことを知っていた。
大学こそは同じだが、単位はギリギリ。ちょっと太目で背も低い。スポーツ音痴で、芸術もさっぱり。
大学時代に、一度も男の子と付き合ったことがなかった。

本当はもっと勉強がしたかったが、朱音が2年生のときに父親が急死した。
大学をやめることも考えたが、社会人になっていた5つ上の兄貴が学費の一部を援助してくれた。
それでも足りないので、ずっとバイトに明け暮れていたのだ。

それなのに・・・。

なぜか、誰もが知る食品メーカーに合格してしまったのだ。

「私が聞きたいくらいよ」

それが本音だった。

「そうよねー」
「うんうん」

と、ワイングラスを手に3人が頷いた。朱音は、ちょっとだけムッとしたが、
本当のことなので仕方がない。苦笑いして頭をかいた。

「本当に、社長のコネとかじゃないの?」
「ううん、ぜんぜん」
「何かの間違いじゃないの?」
「そうかもね」

間違いでもいい。朱音は今、仕事が面白くてたまらなかった。
採用してくれた会社に心から感謝していた。

それから10日ほど経った、ある晩のこと。
会社の同期の仲間15、6人で、会社の近くの居酒屋で飲み会をした。
同期全員に声をかけたが、仕事の都合で半分ほどの人数しか集まらなかった。

同期とはいえ、配属先はバラバラだ。入社1年しか経っていないのに、
おのおの愚痴ばかりが先行する。朱音は、勉強することがいっぱいあり過ぎて、
不満を抱く余裕すらなかった。ただ、ただ、みんなの話を聞いていた。

トイレに席を立ち、用を足してドアを開けたところで、人とぶつかった。

「あっ、ごめんなさい」
「いや、こっちこそ」

相手は大柄な男性だった。朱音は、反動で一歩後ろに弾かれた。

「む? 斉藤さんじゃないか」
「あっ!」

朱音は、次の言葉を失った。人事部長の大熊だった。

「なんだ、会社のみんなで来てるのかい?」
「あ、はい。同期会なんです」
「いいねぇ、同期は仲よくするといいよ。お互いにいろいろ相談しやすいしね。
 これから、40年近く同じ仕事をするんだから」

大熊の顔は真っ赤だった。相当出来上がっている感じ。
何を思ったか、朱音はこんなことを口にしていた。

「あの~一つ伺いたいことがあるんです」
「え? なんだい」
「わたし・・・どうしてこの会社に入れたんでしょうか」

そう言いつつ、ハッとした。朱音は自分も酔いが回っているんじゃないかと思った。
いつもなら、こんな不躾な質問などしない。でも、もう口から出てしまっていた。

「どうしてって・・・採用試験に合格したからじゃないか」
「だって、成績は悪いし、何の取り柄もないし・・・それに、見てくれも・・・」

それを聞いた大熊の紅ら顔が、少し覚めたように見えた。

「ちゃんと採用基準に基づいて採用されたんだから、
 今になってそんなこと考えなくてもいいじゃないか。自信を持っていいよ」
「・・・」

朱音は、真顔で大熊を見つめ返した。その表情が真剣だったからか、大熊は、

「会社の誰かに何か言われたのかい?」

と尋ねた。

「いいえ・・・はい・・・大学の友達に・・・」
「ちょっと、こっちへ来なさい」

大熊は、すぐ近くの空いていたテーブル席へ朱音を促した。
大熊には朱音の視線が、珍しく鋭く感じられた。

「あのね」
「はい」

大熊はあぐらをかいて座った。朱音は、正座して向き合っている。

「絶対に他言は無用だ、いいかい」


《続きは明日》

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